日本史部会2012年10月例会・感想

日 時:2012年10月13日(土)18:30~

場 所:筑波大学附属駒場中・高等学校

報告者:富永信哉さん

内 容:「歴史学の新しい研究成果」で生徒の常識を揺さぶる

     ~中近世移行期の授業~

報告者 富永さんから

 歴史学の研究成果を活かした授業をしたい。歴史を学ぶことの面白さ、歴史の真実に触れたときの驚きを、生徒と共有したい。そんな思いで、日々の授業に臨んでいます。

 高2日本史の授業では、黒田基樹氏の研究をベースにしながら、中近世移行期の授業に取り組んでみました。そんな授業の様子を紹介します。『東京の歴史教育』第41号所収の実践報告ですが、41号には掲載できなかったプリント紹介も行なうつもりです。

 また、上記報告とは直接関係ありませんが、中学歴史や高校日本史の授業で導入に使っている教材も、いくつか持参します。

 

会場から (2012年10月27日掲載)

 『東京の歴史教育』第41号掲載の授業実践を軸にしつつ、実際の授業で生徒に示した様々な資料・材料を紹介してくださいました。参加者はいつもより多く、13名と盛況でした。

 

感想

◆受験を視野に入れつつも、史資料の読解・講義を通して考えさせる授業で、授業内容はもちろん、教材を吟味して更新し続けるとはこういうことなのだと、勉強になりました。ありがとうございます。

 議論の中でも出ましたが、教科書の内容は、研究されてからある程度の時間が過ぎたものに限られます。定番の資料を解釈し直したり、教科書にない資料を盛り込んだりしながら、教室で生徒と授業をつくりあげていくのは、楽しい時間です。しかし、悩むのは、富永さんもおっしゃったように、新しい内容を入れた際、前後の話がつながらなくなってしまう場合があることです。2011年度に行った秋の学習会で、中近世移行期についてお話ししてくださった黒田基樹さんによると、中世史と近世史の研究者の間で、意見交換がまだ十分に行われていないそうですが、そのような中、授業で通史を扱う私たちにどこまでのことができるのか、将来歴史を研究するわけではない大多数の生徒に(しかも段階に応じて)何を伝えていくか、考えさせられました。(I)

 

◆富永さんの日本史授業を受けた生徒の感想から、生徒にとって“面白い授業”とはどのような授業かということについて、あり方は様々だとは思いますが、授業方法の一つとして勉強させていただきました。その面白さは、生徒たちの今までの知識を覆す、意外性を持たせるところにあり、豊富な史料や、その提示の仕方、また歴史研究の成果を授業に取り込む点において、私自身も大変参考になりました。歴史を過去の出来事として捉えるだけでなく、今も様々に研究・評価され、前進していくものであることを、授業のなかでも意識しながらやっていきたいと思いました。(E)

 

◆富永さんの経験がいっぱい詰まったとても勉強になるレポートでした。あたらしい歴史学の研究成果をどう授業化するかは多くの先生達が考えているところだと思います。生徒のようすや期待とどうむきあうか。教科書叙述との接合や対峙の仕方をどうするか。「新しい歴史像」の向こう側にどういう歴史認識が期待されるか。自分自身も考えたいと思っているそういった視点に対して、今回のレポートでは沢山の示唆を頂きました。どうもありがとうございました。(O)