日本史部会2012年9月例会・感想

日時:2012年9月15日(土) 18:30~

会場:筑波大学附属駒場中学・高等学校

報告:天野彩さん

内容:「自ら学ぶ力を育む 高1現代社会の発表学習」

感想

◆生徒が、社会のあらゆる問題に自ら関心を向けていくための良いきっかけになる授業だと感じました。豊富なテーマの中から自分が担当するテーマを選び、それについて調べ、授業で発表をする過程で、生徒は社会の問題を聞くだけではなく、考え・判断するようになっていくだろうと思いました。

また、こうした発表学習を行うに当たっては、教師側のサポートも大きく問われてくることを実感させられました。発表学習のテーマ一覧に関しては、生徒にとって遠い内容→身近な内容へとテーマが組まれていて、テーマ内容も含め、発表学習の工夫において大変勉強になりました。(E)

 

◆生徒のレジュメづくりと発表を準備する過程での非常に丁寧な指導が、印象に残りました。こうした指導はあらかじめ「路線を敷いている」面もあるかと思いますが、しかし、それも必要なのではないかと思います。私が学生だった頃も、生徒の発表による授業があったのですが、このときの指導は「テーマだけ選択させてあとはまる無げ」に近い状況でした。ですから、自分自身、そこから得るものが少なかったと思います。

 それに比べて、今回の実践では、教員の指導がしっかりしており、「データや資料を使って説得的に話す」ということを生徒たちができるようになっていく(少なくともそうしようと努力する)ような工夫がされており、その点が大変魅力的だと感じました。(O)

 

◆天野さんの勤務校で実施されている、体系的な調べ&発表学習について、知ることが出来ました。特色は、生徒のために、教員が多様なテーマを選択肢として用意していることです。歴代の設定テーマの変遷を追っていくだけでも、その時々の時代背景と問題意識が読み取れるのではないでしょうか。また、「女性」に焦点を当てたテーマもあり、女子教育ならではの構成だと思いました。これは本当に手間のかかる実践だと思いますが、それだけの価値があると思います。(K)

 

◆生徒に非常に高度なレベルを要求する課題であることから、生徒たちがどの程度、レポートならびにプレゼンについて、教員が求めている一定の水準にまで達することができるのだろうかということが気になりながらも、しかし課題を与えられた生徒たちは、これをきっかけに当事者意識を育みつつ、ある種の自己の限界を拡張させながら、問題に対処してくれるのではとも思いました。

 長期に渡る実践ですので、最後の発表にいたるまでの展開で、別個の問題であった点と点が線で結ばれる瞬間もあるのだろうと思います。そのとき初めて生徒たちは「わかった!」という経験を共有したり、あらたな思考の出発点に立つような経験を得て、本当の学び、自ら考えて知識を獲得していく、そのきっかけを得られるのではと考えます。

 この実践を通してクラスの上位層にある一部の生徒が、大きく実力を伸ばしてくれるであろうことは十分に期待できます。同時にクラス全体の底上げをどこまで実現できるか、置いてけぼりになってしまう生徒が出ないよう、教員の側からのケアが細部に渡って必要となってくること、そのための指導における負担を教員集団間においていかに発展的に解消していけるのか、僕自身が実践するに当たって解決しなければならない課題であると考えます。(M)