日本史部会2008年度の活動

2008年度の活動をご紹介します。


3月例会の報告

日時:2009年3月26日(水) 17:30

場所:筑波大附属駒場50周年記念会館

内容

 ①映像鑑賞「桃太郎 海の神兵」(1945年:70分)

 日本の敗戦直前に、製作費27万円(現在では4億円)をかけた国策アニメを鑑賞します。戦後GHQに焼却されたと思われていたネガが発見され蘇った作品。手塚治も影響をうけたという、この精力的に作成されたアニメを通して、当時の生の目線で大東亜共栄圏構想を確認したいと思います。

 「桃太郎 海の神兵」については、歴教協編『ちゃんと知りたい!日本の戦争ハンドブック』(青木書店)のコラムでも紹介されています。本がお手持ちにある方はご参照ください。(同書 P.66~68コラム「戦争とマインドコントロール」)

②報告「通史学習のなかで<桃太郎>をスパイスに」

 担当する日本史近現代史の授業のなかで、時々私は「桃太郎」に登場願っています。時代のポイントにどのような「桃太郎像」が見られるのか、大東亜共栄圏構想に向かう根底の大アジア主義の理解のヒントになればという視点からどのような場面で「桃太郎」を扱うか、そんな報告を考えています。


 

1月例会の報告

日時:2009年1月23日(金) 19:00~

場所:筑波大学附属駒場中高等学校 50周年記念会館

内容:映像と報告で沖縄について考える

 ①映像「教えられなかった戦争・沖縄編」 (阿波根昌鴻氏を描いたもの)から

 ②報  告 歴史地理教育2008.4増刊『沖縄から見える日本』

       「農民の誇りをかけた伊江島の土地闘争」(天野彩さん)                     

       他、沖縄に関するレポート2本

 映像は『教えられなかった戦争・沖縄編』で、阿波根氏たちの伊江島の土地を守るたたかいが島ぐるみに発展していくところをみました。1本目の報告は、ちょうど映像と重なる動きを整理したものになりました。2本目の報告者は沖縄出身で、沖縄が日本から分離統治され基地建設が進められていく時期を中心に、「沖縄を含めた包括的な視点」から日本をとらえる必要性を提起。3本目の報告は、沖縄の平和ガイドの方々と連携した修学旅行を「学習ノート」で紹介しました。

 

感想

◆私が阿波根昌鴻さんの『命こそ宝』を読んだのは大学4年生の時でしたが、そこに描かれる“地に足のついた”とも言うべき反戦平和思想に衝撃を受けたことを今でも覚えています。「生産者であるわれわれ農民の方が軍人に優っている自覚を堅持し破壊者である軍人を教え導く心構えが大切であること」(「陳情規定」)では、生産することなく軍備によって保障された“安全”の中で学生として暮らす自分はどちらに立つのか…。破壊者にならないようにするにはどうすればいいのか…。これは私のなかで未だに解決策の出ていない問題です。今回の例会で改めて、教壇に立ったときには生徒と共にこの問題を考えていきたいと思いました。

 

◆伊江島土地闘争の映像を見たのはこれが初めてでした。おかげで、天野彩先生のお話をうかがう前に、乞食行進や陳情規定についてイメージを描くことが出来ました。授業で、生徒に、「住民を動員して作らせた北(読谷)・中(嘉手納・北谷)飛行場は米軍上陸前に日本軍が破壊したんだよ」と話すと皆「ひどい。もったいない。かわいそう。」と言います。伊江島飛行場は「防衛すべきもの」として残されたがために、北部で最も激しい戦闘を生んだことを考えると、もっと伊江島について知らなくては、と思いました。また、天野先生と當山さんのお話から授業で沖縄戦だけでなく「ヤマト世」「イクサ世」「アメリカ世」での沖縄の置かれた状況を追って伝えられたら、と思いました。

 

◆映像と天野さんの報告から、米軍の力による基地建設に非暴力で立ち向かって、じわじわとそれを動かし島ぐるみの取り組みにつながっていく阿波根さんたちのたたかいに、あらためて感じるものがありました。沖縄の学習は、沖縄戦と現在の基地問題だけでなく、この戦後の動き(ベトナム戦争との関わりから復帰運動も含めて)をもっと学び、戦後史学習に何とか組み込みたいものだと思います。また、修学旅行の取り組みを見て、沖縄に行きたくなりました。日本史部会のみんなで伊江島に行けるといいですね。


 

12月例会の報告

日時:2008年12月28日(木) 19:00~

場所:筑波大学附属駒場中高等学校 50周年記念会館

内容:映像と報告で沖縄について考える

  ①映像鑑賞 沖縄のお笑い集団による「米軍基地を笑え」に関するもの

  ②報  告 歴史地理教育2008.4増刊『沖縄から見える日本』

        写真に見るベトナム戦争と沖縄

        沖縄の復帰が「日本」に問いかけていること

 12月例会は沖縄をテーマとしました。沖縄米軍基地を笑いの題材とした映像の鑑賞と、『歴史地理教育』4月増刊の内容を執筆者本人による報告の2本立てで展開しました。今回から新たに参加された當山さんは沖縄出身ということで、報告後の議論も盛り上がりました。

 

感想

◆ドキュメンタリー鑑賞に先立ち、DVD作品『基地を笑え!お笑い米軍基地3』を既に視聴していたにもかかわらず、再度味わったネタの数々に笑いを堪え切れませんでした。コミック「夕凪の街桜の国」を読み返す度、物語後半部で七波の両親が陸橋で仲睦まじく佇む光景に差し掛かると涙腺が自然に緩んでしまう感覚に近いものがあります。今回の上映では代表者小波津正光さんの心の機微に触れられており、基地を抱える県民感情の撞着といったものがよりクリアーに意識出来ました。彼の願いは「色んなことを気にする」人間の簇出に尽きると思います。隣県境には岩国基地が存在し、そこで日常を過ごしてきた友人を持ちながら、また、時折爆音を撒き散らし出身中学高校上空まで飛来していながら無関心でい続けられた自分を捉え直さなければいけません。

 

◆「ベトナム戦争と沖縄」でうかがうまで、毒ガス漏れ事件のことは知りませんでした。「時速10キロでの輸送」「撤去後もアメリカ本土では受け入れなかった」という事実とともに授業で紹介したいと思います。今回の丸浜先生、岩根先生のお話のあと、12月末に平和・国際教育研究会の集会(鹿児島)に参加しました。鹿児島県の野方小学校の先生の「戦争遺跡から本土決戦を考える」15時間の授業などの実践例を聞きながら遺跡をまわり、特攻隊の悲劇だけでなく住民全てを巻き込んだ「第二の沖縄」としての鹿児島を含めた沖縄学習を行ってみたいと思いました。(思っただけではダメですが・・・4月から5年ぶりに日本史を担当するので、出来たらいいなと思ってます)。


 

11月例会の報告

日時:2008年11月29日(土) 18:30~

場所:筑波大附属駒場中高 オープンスペース

    ※門から事務室を右手にまっすぐ進み、

     スリッパに履き替えて3階に上がってください。

内容: 映像とお話しで学ぶ戦前の学校教育

10月の報告で戦前の教育が取り上げられたこともあり、引き続き以下の内容にしました。

① 映像鑑賞『戦ふ少国民』

    横浜の国民学校を舞台に作製された戦前の宣伝映画です。

   授業風景、行事、 体育、地域との関わり、紀元2600年の式典など、

   見ごたえがあります。

② お話し「僕が軍国少年だった頃」

  (寺沢 茂さん(元公立中教員・元東京歴教協副会長))

   80歳を超えられた寺沢さんは、今も、広島での被爆体験などをあちこちで

   語られています。今回は、標記のテーマで、受けられた学校教育のことを

   お話ししていただきます。