日本史部会2010年度の活動

2010年度の活動を紹介します。

◆3月例会について◆

日本史部会会員の皆様

 3月例会の日程のご案内自体しておりませんでしたが、予定では本日となっておりました。しかしこの度の震災を受け、中止とさせていただくことにいたしました。ご連絡が当日になってしまい、誠に申し訳ございません。 

 次回例会の日程は未定です。決まり次第ご連絡いたします。

 今年度も会員の皆様の支えがあって、日本史部会は刺激的な実践報告や議論を重ねることができ、また新たな仲間も増えました。ありがとうございました。

 日本全体が先の見えない苦しい状況下にあります。震災によって危機下にあるという実感が広がっております。「未曾有の国難」という表現もされております。このような「国難」を乗り越えるには、未来を担う者を育てることがやはり出発点、基盤となってくるはずです。明治維新を迎え、衰退へ向かおうとしていた京都の人々が復興のためにとった選択は、学校の設置でした。学制発布の三年前に、人々の協力の下、番組学校と呼ばれた教育の場が、地域地域につくられたそうです。

 時間はかかりますが、教育が柱となっていくのは間違いありません。歴史を振り返り、歴史にヒントをもらいながら、子供たちとの学び合いの中で、「未曾有の国難」を乗り越えていきたい、そのようなことを考えております。

 2011年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。


 

10月例会の報告

日時:2010年10月16日(土) 19:00~

場所:筑波大附属駒場50周年記念会館

報告:「生徒が考える歴史の授業 明治初期の日本と朝鮮

    -江華島事件をめぐって」(山田耕太さん)

 今年度、2人の教育実習生と共につくった生徒参加型の授業の実践報告です。征韓論争から江華島事件そして日朝修好条規(江華条約)締結に至るまでの、明治初期の日本と朝鮮の関係をテーマとした5時間分の授業です。8月に行われた第18回日韓歴史教育交流会での報告をもとにレポートします。


 

9月例会の報告

日時:2010年9月25日(土) 18:30~

報告:「中学校社会科歴史的分野の授業開き」(石田尚子さん)

 

感想

◆教員3年目とは思えない、堂々とした内容で感心しました。大学で勉強された専門性(サル学)を遺憾なく発揮した授業で、生徒たちもこれから学ぶ日本史への興味・関心を大いにかき立てられたことでしょう。その意味でも、これは“授業開き”の最初の授業としては成功だと思います。私達は知ってること、調べたことはみんな喋りたくなってしまいます。その点、石田さんの授業は実に抑制が利いていて、しかも興味深い話題が豊富で、かつ教員の一方的なしゃべりだけではなく、生徒たちにもグループを組ませて作業させたりと、教材の配列・授業の構成もよく考えられたものになっています。理系に強い人はスゴイ!(羨ましい…)正直な感想です。(I)

 

◆教員4年目の実践報告で、学生時代の専門分野とはいえ、プリント、授業計画とも、良く練られていて感心しました。口を激しく使う動物は、すぐ近くにある脳が衝撃を受け、脳が巨大化できなかった、と言う学説も面白く聞きました。ヒトの立ち姿を書かせて骨格の特徴を考えさせるなど、作業や話し合いも組まれていて、授業としても動きとまとまりのある優れたものだと思います。是非もっと大きい会で報告しましょう。(T)


 

7月例会の報告

日時:2010年7月3日(土) 18:30~

報告:「弁護士布施辰治と朝鮮・台湾」(岩根謙一さん)

 

感想

◆岩根さんが翻訳した宮三面事件の碑文に驚きました。それと同時に、布施辰治のような人物に迫る際には、海外の史資料にも目を向けることが必要だと改めて思いました。教員がすべての史資料を翻訳することは不可能ですが、このような取り組みが他にもあったら知りたいです。

 現地にある宮三面事件の碑文には、日本語版解説が存在しません。一般の旅行客が現地に行かないことも関係しているのでしょうが、今回の発表で翻訳版を読むことができ、布施が韓国でどのように思われているのか勉強になりました。

 一方、日本国内の観光地や博物館に行くと、解説板のそばに英語や中国語、ハングルの解説が並んでいますが、英語の中にも「何か日本語の説明と違う・・・?」と思われる箇所がまれにあります。中国語やハングルの解説がどうなっているのか、分からないのが残念なのですが、日本語と中国語、もしくは日本語とハングルの両方が分かる人が解説板を読んだときに「??」と感じることもあるのではないか心配でもあります。歴史認識というと、教科書記述が問題になることが多いですが、このようなところにも目配りをする必要があるのではないかと考えさせられました。(I)

 

◆布施辰治は、通史(小学館・日本の歴史など)で語られるようになるほど知名度を上げてきている存在です。彼の功績は素晴らしいものであり、韓国政府が注目するのも納得できます。しかしながら、今までの扱われ方は業績など表面的な部分ばかりでした。布施辰治の業績に注目しすぎると、当時の日本が犯した過ちを見過ごすことにもなりかねません。その意味でも、布施が何故あのような行動を行ったのか、その背景を理解することが重要になると感じています。今回の発表では、生い立ちや時代背景などに触れられており大変勉強になりました。今後、更にそのような部分を深めていかれることを期待しています。素晴らしい発表、ありがとうございました。(O)